きつね色、たぬき色のとんかつだけでなく、白い衣のとんかつもずいぶんと認知されてきました。すると年に数回は必ず黒いパン粉のお問合せをいただきます。私たちも過去に1度黒いパン粉にチャレンジしましたが、製造ラインにおいて黒いパン粉が通常パン粉に混ざりクレームの原因となるため製品化は断念してしまいました。しかしこの度試作を重ね、パン粉メーカーとしての黒パン粉が完成しました。とんかつ店だけでなく、フレンチ、イタリアン、串カツ店、割烹、居酒屋色々なお店でテストもしていただきました。

カカオ、イカスミ、竹炭などなど黒くなるパウダーを生地に練り込んでパンを焼き、粉砕すれば黒いパン粉の出来上がり。私たちは今回「黒」に特化するため竹炭のみで製造しました。パン生地の大きさや量も変え、山型と角型と作り分けるなどテストを繰り返しました。

黒食パンはリテールのパン屋でも作ります。パン屋で黒食パンを焼いてもらい、それを仕入れて自分でフードプロセッサーを使いパン粉にしている飲食店もあるでしょう。しかし、パン屋が作る食パンをパン粉にするのと、パン粉メーカーがフライ専用に作るパン粉ではその目的が違います（食パンとパン粉の違いをご参照ください）

ゆえにフライに特化した黒パン粉を作るのですが、ここで大きな問題が出てきます。

それは黒パン粉が異物の混入と間違えられてしまう、という問題です。また製造過程において「黒」が機械に付着し清掃の手間がかかる点もあります。

黒パン粉が通常のパン粉に1粒でも入るとどうでしょう？その黒さが異物と間違われ異物混入クレームとなります。このクレームをリスクと捉えるとどうしても量産化へは二の足を踏んでしまいます。

色付きのパン粉はなかなか厄介な代物です。

とはいえ工夫を凝らしながら通常の製造ラインとは別に手作業の比率を高めて黒パン粉の製造に成功しました。その名も

GOD　SPEED　YOU！BLACK　PANKO

黒パン粉は揚げても、真っ黒のままなので色で揚がっているか判断ができません。ゆえにコントロールしやすいように糖度は中程度。丸挽にして香ばしさが残るようにしています。例えばレストランでコース料理の1品に使用する場合、ある程度しっかりしたパンの風味があるほうがワインに合います。魚介や牛に使用することも考慮し、素材の柔らかさとのコントラストが出るようにあえてザクっとした食感になるように作っています。

目立ちがありますので、フードプロセッサーでできる丸みを帯びたパン粉とは差が出ます。

パン粉の大きさをLサイズ以上にすると「黒」が強調されすぎてしまいました。食欲を考えるとサイズはあえて抑えめのS～Mサイズにしています。衣以外にも黒パン粉を炒って料理に合わせたり、ふりかけのようにかけたりと単品でも使えます。「黒」はインパクトが強いので素材の色や付け合わせ、食器で彩ることでよりアレンジが効くと思います。スポットのメニューで使用し常連さんを驚かせるもよし、イベントなどで差別化をはかるもよし、もちろん写真映えを狙うもよし。

地下に潜伏していた黒い衣をまとったフライがいよいよお目見えです。